【 もしもシリーズ-036 】
イワンはユニコーン。
一角獣代表の白馬幻獣。
彼らは多くいたのだが、人間の乱獲で減ってしまった。
イワンは、たった一人残ったユニコーン。
仲間を奪った人間、どんなに病魔が蔓延しても、角をやる気はなかった。
万病に効くユニコーンの角。
彼の角は小指の先ほどの小ささだったが、それゆえ非常に効果が強い。
国を挙げての大捜索、捕獲すれば姫と結婚する事すら夢ではない。
皆血眼になって捜しまわり、イワンは逃げ惑っていた。
やっぱり、人間なんて嫌いだ。
自分の事ばかりで、静かに暮らす事も許してくれない。
気性の荒いユニコーンだったら突き殺すかもしれないのに、娘を座らせて自分をおびき出そうとする。
確かに、ユニコーンは純潔の乙女の膝に頭を乗せて眠るのが好きだ。
でも、皆が皆じゃない。
イワンはどうしても、愛らしい娘に惹かれなかった。
自分はいったい何に惑うのかいつも不思議だった。
そんなある日、湖の傍で。
とても綺麗な人を見つけた。
傍から見れば、それは30過ぎの髭の強面。
そして実は、この国の王。
だが、彼はユニコーンに興味はなかった。
娘も健康、妻はもう先立っている。
盟友は病気になっても棺桶をくれてやる勢いだ、互いにそういう性格だ。
国の活性化と言われて適当に命じたから、彼は全くユニコーン狩りをしなかった。
今日も、執務を抜けて昼寝中。
近衛兵の追撃を免れて、深い森の奥にいる。
うとうとしていると、影が差した。
曇ってきたかと目を開けると、そこには。
今まで見たどのユニコーンより、白く美しく、愛らしい姿。
前者は皆の感想だろうが、愛らしいと感じるのは男だけかもしれない。
だが、だからなんだと思った。
今昼寝中なのだ。
さっさとどこかに行け。
そう思って目を閉じると、仰向けで伸ばしている膝にわずかな重み。
面倒だと思いながら見やれば、ユニコーンが膝に頭を載せてうとうとしていた。
その伏しかけの瞳がぞっとするほどに色っぽい。
馬というのは往々に色っぽいが、これは特別だ。
心地よさそうな吐息をつくそれに、そっと手を伸ばす。
頬を撫でると、温かかった。
これを持って帰れないかと考える。
別に殺して角を奪おうと言うのではない。
これが、欲しい。
寝入ったのを確認し、そっと持ち上げてみる。
担いでも、暴れなかった。
意気揚々とユニコーンを担いで帰り、城は大騒ぎ。
最後の一匹のユニコーンを王様が捕まえてしまったのだ。
王の盟友は魅惑のユニコーンを捕まえられず、姫のサニーまで逃がしたのに地団太踏んで悔しがった。
ユニコーンは、厩でなく王様の部屋に運び込まれた。
王・・・・アルベルトは、ベッドに下ろしたユニコーンをまじまじと見つめた。
うん、可愛い。
雄と分かっているが、ちょっとつまみ食いしたい。
が、ユニコーンの機嫌を損ねるのは得策でない。
これは角が短いから突き殺される心配はなさそうだが、ユニコーンは無理に拘束すると暴れて自傷し死んでしまうのだ。
どきどきしながら、色々と計画を立てる。
脅して、抵抗できぬようにしてしまおう。
暴れる事さえ出来ぬように、騙していよう。
そうすれば、ずっとこの綺麗な生き物を手元における。
目を覚ましたユニコーンは逃げ出そうとしたが、アルベルトの言葉に足をとめた。
お前の仲間を殺していいのか。
森に火をかけると、言ったのだ。
森にはユニコーンだけがいるわけではない、イワンの友はもう居ないユニコーンだけではない。
イワンは、黙って俯いた。
アルベルトの方へと寄り、そっとその膝に頭を載せる。
飼殺される事を、承諾したのだ。
イワンは一度も笑わなかった。
あの日、どきどきしたように自分を見つめて膝に頭を乗せたような行為は一度もなく。
憂鬱そうに、膝に頭を預ける。
アルベルトはそれでも満足だった。
美しいユニコーンが自分のものになったのだ。
毎日愛で、言葉をかけた。
一方的に。
夜はイワンは一人だった。
明け方にアルベルトは白粉の匂いを纏って帰ってくる。
アルベルトはあくまでユニコーンを馬と認識していたのだ。
だが、イワンは馬でなく幻獣。
知能は人間と変わらないし、心だってある。
この人は、何のために自分を捕まえているのだろうか。
角を奪うでなし、愛玩するわけでなし。
段々と疲れてきて、食事が苦痛になる。
だが、食べないと森が焼け野原になるのは目に見えていた。
アルベルトの前では口に押し込み、後で耐えられずに吐き戻す。
我慢しても、もう胃が受け付けなかった。
衰弱していくユニコーンに、アルベルトは焦った。
どうしたら、この生き物は死なずにいられるのか。
厩番の幽鬼に尋ねたら、呆れかえった顔をされた。
ユニコーンを普通の馬として扱うからだと。
そこで初めて、ユニコーンが人間並の知能を持つと知ったアルベルト。
慌てて部屋に帰り、ユニコーンに話しかける。
イワンは、意識を朦朧とさせながら『ご飯を食べるのが苦しい』と言った。
口を開けさせれば、逆流した胃液で炎症を起こし、腹に手を当てれば胃が痙攣している。
誰にも触らせなかったユニコーンを、初めて医者に見せた。
彼はもう、ぼろぼろだった。
だが、森に返す気はなかった。
部屋に連れ帰り、つきっきりで看病する。
少しづつ快方に向かうと、沢山話をした。
イワンは徐々に話に答えるようになり、そして。
アルベルトは、彼が余りに純で綺麗な心を持つと、知った。
それからは、一緒に執務を抜け出し、笑いあい、時には連れだって戦場を駆け抜けた。
いつの間にか、数年が過ぎていた。
ユニコーンはますます魅力的になり、角より体を狙う者もちらほら出始める。
躍起になって、それを阻止した。
単に執着していたのでない。
恋を、していた。
自分だけのユニコーンにしたい。
拘束するのでなく、自分だけが知る面を作りたいのだ。
夕方、黄昏に照らされる私室で、ユニコーンの頭を膝に乗せる。
イワンは、幸せそうにまどろんでいた。
ああ、欲しい。
それを堪えていると、ユニコーンが見つめてくる。
「・・・・私の身体を、どうぞ」
「何・・・・?」
「必要なのでしょう・・・・?」
悲しそうな瞳に、怯む。
だが、直向きな瞳は愛が籠もっていた。
だから、引き寄せた。
引き寄せて押し倒し、組み敷いて。
濃厚な、接吻を。
甘い口の中は、あの日のように炎症を起こしてはいない。
滑らかにとろけ、舌先に痺れるような快楽を与える。
「は・・・・・・」
「ふ、は・・・ぁ・・・・・・」
初めての接吻に息を弾ませるのが愛おしい。
掻き抱いて、もう一度。
滑らかな白い肌には、しみ一つない。
撫でればふわっと粟立つ敏感さだ。
ごくりと喉を鳴らし、唇をつける。
唇を水や蜜のように癒す極上の肌質だ。
目を細め、軽く吸いついた。
「ぁんっ」
敏感な身体がびくっと跳ねる。
どうやら少し驚かせてしまったらしい。
痛みと言うより、初めての感覚に。
苦笑して、胸の尖りを舌で擽る。
舌先でくりくり弄ると、もじもじと腰を揺らした。
が、やけに緊張しているように見える。
身体をどうぞと言った割に、戸惑っている。
怖いのかと聞けば、怖いと。
痛くしないと言うと、半泣きで頷いた。
だが、きつくなっている自身を取り出すと、ぽかんと見つめてくる。
頬くらい染めるかと思ったが、それよりもっと初歩的な問題らしい。
「・・・・・・・・?」
「?」
見つめあい、漸く分った。
これは、とうとう角が必要になったと思って身体を、即ち角を取られていいと言ったのだ。
自分は、愛を注いで情交したいわけで、誤差がある。
少し迷ったが、ちゃんと言っておく。
セックスを求めているのだと言ったら、益々間抜けかつ愛らしいぽかんとした顔をし、首を傾げて勃起した男根を見やる。
「私には、入れる所が無いですが・・・・」
「構わん、尻で代用する」
「・・・・・・えっ」
イワンが座り直し、アルベルトの男根を両手でにぎにぎと触る。
そして、首を振った。
「こんな大きなおちんちん、入らないと思います」
愛する者に握ってもらって「大きいから無理」なんて言われれば、大概の男はにやけてしまう。
アルベルトも頬が緩んでいた。
大丈夫だと言い含め、愛したいのだと言いつのる。
イワンは、アルベルトの愛は感じていた。
この何年も一緒にいて、好きになってしまった。
この人からの愛も、感じている。
でも、そんな、だって。
お尻で、交尾するなんて恥ずかしい。
その辺はやや動物的な感覚のイワンは、快感を求めると言う発想は薄かった。
アルベルトの雄としての本能を満たしてあげたい、そうして自分も満たされる。
そういう心理的な部分で、了承した。
そっと這って、お尻を上げる。
アルベルトは苦笑した。
確かに、これの発想としては交尾は背後位だろう。
こちらの方が負荷も少ないだろうし、構わないが。
顔も見たいが、初めから苦痛が大きいのも考えものだろう。
余り強めに出ると、怯えさせるし・・・・。
まるで初めて見つけた時のように、どきどきと色々な事を考える。
あの時はひたすらに手に入れたいばかりで、イワンの気持ちなど考えもしなかった。
でも、今は。
愛している、愛されている。
だから、ゆっくり花開かせてやりたい。
そっと尻を押し広げ、花の香りの香油を垂らす。
尾てい骨の辺りに落とせば、ゆっくりと垂れ落ちてくる。
窄みはひくひくしてそれを待っていた。
香油を含んで益々艶めかしい窄みを指先でつつくと、もぞもぞと尻を気にする。
揉むと、やはり違和感があるようだ。
ゆっくりと指を差し入れ、様子を見る。
痛みは少ないようだ。
奥まで入れて掻き混ぜると、小さく唸った。
気持ちが悪いと言うより、初めてでそれすら判別がつかぬ様子。
愛らしくて、背中に口づける。
小刻みに中をかき回すと、背中をびくびくさせてシーツを握った。
「ぅ、ぁは、っ・・・・・・」
「我慢するな。声を出せ」
シーツに縋ったまま頷くから、無理に顔を上げさせはしなかった。
赤くなり始めた耳を見れば、快楽を感じているのは明白だ。
ぐいと奥をつくと、泣きそうな顔で、唇を戦慄かせる。
「あ、あん、く、ぅ」
「ここか」
「あぁ、ぁっあ」
腰ががくがくしているし、膝も震えている。
後ろから支えつつ押し当てると、イワンはこくんと唾を呑んだ。
「ぅあ、ぁは・・・・・!」
「っは・・・・・・」
ずずずず、と犯していく肉槍は、硬く大きい。
狭い後孔は痛んだし、臓腑が押し上げられてかなり苦しい。
でも、腰が溶けたように気持ちが良かった。
もう膝はがたがたで、アルベルトの腕に完全に支えられていた。
なのに、後孔は上手く緩んでくれない。
実際はその締まりが極上の快感を生むのだが、イワンが知る筈が無い。
必死に緩めようとして、不規則に締めては中に熱い先走りが滴って、また締めてしまう。
お尻まで薄ピンクにして、可愛い悲鳴を上げているユニコーン。
がっつきそうになるのを堪え、大きく腰を打ちつける。
「ああ、あ、あぁん、あ」
お腹の中を掻き混ぜられるのが気持ちいい。
ぐりぐり壁を押されて、おちんちんがびりびりする。
奥にぐぐっと差し込まれ、身を捩る。
我慢できなくて、精液を噴いた。
「あ・・・・・ふ、あ・・・・・」
「っ・・・・・」
びく、びく、と震える肉管に誘われ、アルベルトは食い縛っていた歯を緩めた。
中にたっぷりと種付けすると、肉管が嬉しそうに絡みついてくる。
初めての交尾にすっかり疲れきっているイワンを抱き、こめかみにキスを。
愛しいユニコーンに、愛をこめて。
国王アルベルト、現在38歳。
姫のサニーは結婚を勧めてくれますが、問題が。
近衛兵から軍師、大臣まで出張って、皆で結婚式の計画の邪魔。
可愛いユニコーンを我が物にせんと、毎日のように求愛しています。
ユニコーンはつぶらな瞳で首を横に振り、王様のもとへ。
彼が受け入れるのは、王様の求愛だけ。
そして、今日も執務とプロポーズの嵐を振り切って。
泉の傍で、膝枕。
王様のちょっと硬い膝に頭を載せ、ユニコーンは幸せそうに眠っています。
それを見ている王様も、盟友の大臣が見たら石を投げそうなくらい。
格好良くて、優しい顔で。
ユニコーンを、見つめています。
***後書***
ユニコーンイワンさんには、最初から最後まで服を着脱する描写がありません。幻獣だから、全裸で良いの!(その方が燃える!)