【 もしもシリーズ-045 】



年齢はお好きにご想像ください。





「セルにぃさま」

「うん?」

声をかけられ振り返ると、幾つになっても愛らしい弟がいた。


「あの、お茶はどうなさいますか?」

「ああ・・・・もうそんな時間か・・・・どうする、アルベルト」


セルにぃさま、セルバンテスは、今双子の兄弟とチェスをしていた。

帝王切開の双子だから、どちらが兄なんて誰も言わないし、気にした事もない。

相手をしていたのは、アルにぃさま、アルベルト。

弟のイワンに、溜息をつく。


「そんな事を貴様がせんで良かろうが」


3人はとある貴族の生まれ、勿論お茶どころか爪切りだって自分でしなくて良い身分。

しかし、イワンはいつも二人の兄に仕えるように働いている。

引け目に思っているのだ、母を奪ったと。

初産で双子、それも帝王切開を行った母は、かなり病弱な人だった。

父は自分達が生まれて数年の後に死去、その3ヵ月後にイワンが生まれた。

両親のたっての願いで自然分娩を行い、そして。

母は死んだ。

随分勝手な話だ、イワンから父はおろか母まで奪い、更に業まで背負わせた。

それは彼が気にする事で無い。

だが、自分達の為に彼は心を痛めている。

一人で泣いているのも知っている。

命日には、雪だろうが雨だろうが、忘れかけている自分達を怒りもせずに、一人墓の前に立っている。

何を言っても慰めにはならない。


「・・・・・・菓子は」

「はい、ブルードネージュです」

「フロランタンじゃないの?」

「あ・・・・・す、直ぐに焼いてまいります」

「え、ちょっ・・・・・・行っちゃった・・・・・」


見るからに気落ちする男に、馬鹿者、と言ってやる。

あの気にしいが、自分の好物だけを焼くわけがない。

材料が足りなかったとか、そう言う事だろう。

でも、片方の好物だけを出してしまったことを悔いているのだろう。

今からこの雨の中、材料を買いに行って作るのだろう。

溜息を吐き、駒を動かす。


「・・・・・・チェックメイト」





顔の全く違う片割れと、ゆっくり話した。

キッチンから漂う香ばしいアーモンドとキャラメルの匂い。

ゆっくり話した、弟の事を。

窓の外は激しい雨になっている。

弟の事を、愛していると。

ナッツの匂いが薄れる、きっともうカットして、冷ましている頃だ。

愛していると、伝えようと話した。

ノックの音がした時、顔の全く違う片割れとともに。

ソファを立って、顔を見合わせる。

ドアが開いたら、皿を奪って抱きかかえて。

全て、何もかもはんぶんこの男と一緒に。

弟もはんぶんこする事に、決めた。






「セルにぃさま・・・・・アルにぃさま・・・・・?」

きょとんとしているイワンは、元々こういった色恋に疎い。

娘と付き合うのも何とも健全、火遊びが好きな女には直ぐに捨てられてしまう。

だが、色気は何とも良い具合だ。

きつすぎず、仄かに、しかし生半可な女では叶わぬ程に。

無垢な瞳を見つめて、片割れとちらと視線を交わした。


「ねぇ、イワン君」

「はい」

「私とアルベルト、好きかい?」

「はいっ」


満面の笑みで、一瞬の躊躇もなく頷く可愛い弟。

フロランタンの乗った皿を置いて、ベッドに座る。


「・・・・・・じゃあ、どっちの方が好き?」

「えっ・・・・・・・?」


イワンはきょとんとしていたが、段々と狼狽し始める。

選べないけれど、茶化せる雰囲気ではないから。

可哀想なくらいおろおろして泣きそうな顔、その柔らかな頬を、アルベルトがそっと撫でる。


「選べぬなら、選ぶな」

「え・・・・・?」

「二人とも、受け入れろ。二人分の愛を、一身に受けろ。二人分、愛せ」


言わんとする事を察し、イワンが困ったように頬を染めた。

兄からの愛はいつも感じているし、愛している。

そう言った事になるとは思っていなかったが、嫌ではない、寧ろ嬉しい。


「あ・・・・・・あ、えっと、その・・・・・」

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。時間はいっぱいあるし、先ずは私達が君を愛してあげるから」


セルバンテスの手が、そっとイワンの肩を押す。

ぱふっとベッドに倒れ込んだイワンを前に、もう一度視線を交わす。


「私はキス含め口が良いんだけれど、君は?」

「・・・・・構わん」


お口の初めては、セルにぃさま。

お尻の初めては、アルにぃさま。

目の前で決定された事に、イワンは顔を真っ赤にしてもじもじしていた。

異論はないし、逆でも構わない。

大好きな兄二人と愛し合えるなら。

きゅっと唾を飲み、だっこを強請るように手を伸ばす。

左手でセルバンテスのクフィーヤの裾、右手でアルベルトのネクタイの端っこを掴み、こくんと唾を飲んで。


「が、頑張り、ます」

「・・・・・聞いた?凄く可愛い事言ったよね」

「ああ・・・・自分の弟とは思えんな」

「同感」


ふっと笑った二人の兄が、弟の服を脱がせていく。

手際が良いが、不安を与えるような急性さは無い。

晒された滑らかな肌を辿る。

セルバンテスが手指を、アルベルトが脚を。

手で大事そうに持って、唇で愛す。


「に、にぃさま・・・・・そんな・・・・・」

「イワン君はどこもかしこも、お菓子みたいだねぇ」

「ぅ・・・・・・・・・・」


恥ずかしがって俯いてしまうから、セルバンテスは耳を噛んで囁いた。


「可愛い可愛い、私達だけのイワン君だ」


ねぇ、と見やられ、アルベルトが反対の耳を舐め上げる。


「誰にも、渡さん。一生手放しはせんぞ」

「にぃさま・・・・・・・」


羞恥と嬉しさ、切なさを滲ませ、イワンがアルベルトに手を伸ばす。

反対の手は、勿論セルバンテスの方に。


「にぃさま、だいすき・・・・・」


照れたように可愛い告白をしてくれる弟に、頬が緩みっぱなしだ。

いつも笑っているがどこか薄ら寒い男はもうでれでれ、いつも仏頂面のはだらしなくにやついている。


「ちゅうしてもいいかい?」

「は、はい」


ぎゅっと目を閉じた弟の口端はちょっと引きつっている。


「大丈夫だよ、痛くないから・・・・・・」

「んっ・・・・・・」


ちゅむ、と吸い付かれ、唇が擦れあう。

少し乾いた男の唇を感じ、イワンはどきどきしながらそっと目を開けた。

優しい不思議な瞳が、至近距離で自分を見つめていた。

それが優しく細められ、唇を柔く食まれる。


「・・・・・・・・・ん・・・・」

「・・・・・・・ふ」


暖かくて、心地が良い。

兄との初めての接吻にもじもじしている姿を楽しんでいたアルベルトは、手にしていた脚をそろりと開かせた。

白くてぷりぷりの脹脛や腿、そしてちょっと勃ちかけの甘そうな雄。

手を伸ばして触れると、セルバンテスが小さく呻いた。


「痛・・・・・吃驚した?」

「ご、ごめんなさ、あ、ぁっ」


突然触られて驚いたイワンは、セルバンテスの唇を噛んでしまっていた。

血の滲んだ唇を笑みに歪めた男は、イワンの頬を手で包んで顔を近づけた。


「痛い・・・・・ねぇ、舐めて治して?」

「ん・・・・・・・」


やんわり扱かれながら、必死に気を逸らして男の唇に舌を這わせるのが可愛い。

ちゅっちゅと血を舐めとって、セルバンテスの首に腕を回す。


「セルにぃに・・・・・」

「ふふっ、懐かしいねぇ」


幼い呼び方で呼ばれ、苦笑する。

愛らしさに機嫌良いアルベルトが愛撫の手を強めると、イワンの手がセルバンテスの首から外れ、ベッドに倒れそうになる。

支えてそっと横たえてやると、アルにぃに、と可愛い声が呼んでくれた。


「あっ、ん、はあっ・・・・・・」


もどかしげに腰を揺らすイワンの様子を見ながら、やや扱きを強めた。

そのまま騙すように、舐め濡らした指を差し入れる。

後孔は異物に最初反応を示さなかった。

もぞもぞと噛むようにして、そしてそれが異物で外側から差し入れられていると気づいた瞬間、食い千切りそうな勢いで締めあげてくる。


「あ、あっ、アルにぃに、なに・・・・・?」

「指だ。そう緊張せんでも、傷つけはせん」

「で、でも、そこはそういう・・・・・あっ、あ」


ずずっと奥に差し入れられ、脚がシーツを滑る。

時折セルバンテスがキスをくれたから、苦しさは和らぎ、息苦しさも無い。

柔らかい身体をゆっくりと解し、双子は視線を交わした。

アルベルトが頷くと、セルバンテスが微笑む。


「はい、ちょっとうつ伏せねんねしてね」

「ん・・・・・・・・・・」


ころんとひっくり返されたイワンが、肘をついてセルバンテスを見上げる。

セルバンテスは自身の男根を取り出し、イワンの頬を撫でた。


「出来るだけで良いからね、私を愛して欲しいんだ」

「あ・・・・・・・・・・」


口でして欲しいと言われていると気づき、イワンは頬を染めながらも微笑み頷いた。

噛んでしまうとまずいので、先にアルベルトが後孔に差し込む。


「あ、ああ、う・・・・・・」

「っ・・・・・・・・・・・・」


柔らかな肉孔はゆっくりと開き、大きな男根を飲み込んでいった。

半ばまで飲み込むと、締めつけがやや柔らかくなり、吸いこむように蠢く。

セルバンテスが背筋を辿ると、イワンが熱い溜息をつく。

その瞬間、一気に奥まで押し込んだ。


「ぁはぁっ!!」

「っは・・・・・・・セルバンテス、良いぞ」

「うん、はい、イワン君・・・・・・」

「はっ、ぁ、ん、んっ」


ぺちょっと這った舌に、セルバンテスが息を詰める。

ピンクの舌が覗き、柔らかく濡れた感触が幹を這いまわる。


「イワン君、上手だねぇ」

「ん、んっ、ぷは、はっ・・・・・・」


吸いついたり舐め上げたりと頑張ってくれるイワンを時折突き上げるアルベルトだが、そろそろ大丈夫そうだと踏んで片割れを促す。

セルバンテスはイワンの顎を支え、ゆっくりと中に差し入れた。


「ん・・・・んぐ・・・・・・」

「噛んだら駄目だよ。そのまま喉を・・・・・そう、良い子だね」


身体の柔らかく従順な気質のイワンが喉を開くと、慣れた男は器用に咽頭まで差し込んでしまう。

顎を支えたまま、突き上げられる度に締まる咽頭と、震える声帯を楽しんだ。


「んんっ、んぐっんぅぐ」


涙を零しているイワンだが、抵抗はしなかった。

頬は赤らみ、身体も熱い。

汗が香り、勃起している。

大好きな兄二人に、口とお尻を犯されて、陶酔を始めた身体。

可愛い意味で厭らしく、色っぽい意味で純情な弟に、兄二人はもう夢中だ。

穏やかに、しかし力強く犯してやり、吐精を促す。

前立腺をに執拗な刺激を受けて、イワンが半強制的に射精すると、アルベルトはきつく締まった孔に一瞬の躊躇もなく注ぎ入れた。

中に吐き散らされる精子に腰が痙攣するが、悲鳴を上げた声帯の震えで、口内はおろか喉まで満たしていく粘液。

咽そうになるが、セルバンテスが上手に飲み込ませてしまう。

半分は零したが、咳き込んだり吐き戻したりはしなかった。

口許と下腹、尻の狭間と腿を白濁で汚しながら、イワンは幸せそうに笑ってくれた。


「にぃに、だいすき」





三人の兄弟がいます。

双子の兄は、何でもはんぶんこ。

弟の身体も、はんぶんこ。

でも、貰う愛情は、50%なんて半端はありません。

ちゃんと一人につき100%。

自己愛を合わせると、愛情200%の男達です。

だから二人は、弟を力いっぱい愛して。

自己愛が薄過ぎる弟の愛情総合値を。

200%にして。

三人皆、さんぶんこ。





***後書***

にぃにって言って欲しかっただけですが、何か?