【 日用品シリーズ-004 】
癇癪を起して携帯電話を投げてしまった。
木っ端微塵になってしまったそれに大したデータは入っていない。
新しいものを買いに行く事にする。
売り場の隅から始めて順繰りに眺めて行った。
元々新しいもの好きなレッドは、最新のものを好んで使う。
今度は何が良いだろう、カラーは赤に決めているが。
そう思いながら見ていると、端の端、終わりの所に置かれた携帯電話。
白くて、柔らかそうで、笑顔が可愛い。
皆に耳元で囁く様にお試し通話されて恥ずかしがる姿が愛らしい。
気づいたら店員を呼びつけて購入していた。
携帯電話を持って帰る。
歩けますからというのを黙らせて抱いて帰った。
折角買った新しい携帯を見せびらかしたいのだ。
家に着き、携帯と説明書を置いて冷蔵庫をあさる。
プリンを3個出した。
珈琲を入れ、自室に戻る。
携帯電話は大人しくベッドに座っていた。
主人に気づいて微笑みを浮かべるのに気を良くし、隣に座る。
カスタードプリンを一個渡し、食べるよう言った。
この携帯は充電がカロリーなのだ。
遠慮していたが、使いたい時に充電が切れたら困ると言うと、苦笑して頷いた。
可愛い口でプリンをもぐもぐするのを見ながら、自分もプリンを食べ始める。
レッドのはカスタードのとショコラのだ。
珈琲を飲みつつ、説明書を読む。
録音や通話は変わらない。
メールは彼が走って届けに行ってしまうのであまり使わない方が良いだろう。
この可愛い携帯を手元から放したくない。
電卓のほか、料理や洗濯も出来る。
中々良い機能だ。
水に入れても良い、だが炎天下放置は禁止。
ふんふんと頷き読んでいると、携帯が自分をじっと見つめている事に気付いた。
見遣って首を傾げると、個人設定をして頂けませんかと。
名前と、アドレス、番号を教える。
そして、この携帯の特殊設定。
名前を、与える。
少し考え、イワンと名付けた。
携帯は嬉しそうに笑ってくれた。
とても、温かな笑顔だった。
すっかり携帯電話に夢中になっているレッド。
片時も離さずに傍に置き、いつも、無意識にさえ撫でたり触ったりして可愛がっている。
通話の一つもしないで。
イワンはそれが少し寂しかった。
黙って触れているばかりで、余り声も聞けない。
悲しくて、一人で泣いていたら。
見つかって、しまった。
どうしたのかと心配されて、通話してもらえなくて寂しいと言った。
素直に言ったのは、素直に言って欲しそうだったから。
取り繕っても、駄目と感じたから。
レッドはイワンの言い分を聞き、初めてしまったと言う顔をした。
そして、通話は誰かにかけないと駄目なのかと。
言っている意味が分からずにいると、レッドはイワンを引き寄せて耳を甘く噛んだ。
そして、甘く囁かれる。
「愛している・・・・・・・」
今、通話は繋がっていない。
自分に言っているのだと気付き、イワンは赤面した。
甘く冷たい声で囁かれる甘い言葉。
恥ずかしくて、でも嬉しくて。
凄くどきどきしてしまって。
こくんと唾を飲めば、やんわりキスを。
仮面を外した顔を初めて見た。
もっと顔が熱くなって、逃げ出そうとする。
すると捕らえられ、抱きしめられた。
腰に当たるものは熱く、レッドの吐息も熱い。
欲情しているのだと思うと、少し怖く、とても嬉しかった。
そういう機能は無いけれど、出来ない訳じゃない。
服を脱がされるまま身を任せる。
丸裸に剥いてしまうと、レッドはイワンをベッドに乗せた。
身体中にキスしていく。
気に入りの指も、柔らかい頬も、白い腹も、なめらかな背も。
腕も脚も、余すところなく。
携帯は少し抵抗したが、恥ずかしがっているのだとは分かった。
咎めず、何度もキスする。
すっかり注がれる愛にめろめろになってしまったイワンは、とうとうくたんとベッドに身体を投げてしまった。
軽く息を弾ませ、瞬きは緩慢。
愛に酔う姿が可愛い。
たったこれだけで酔ってしまうのは愛に対する下戸といえようが、それが何とも可愛らしかった。
胸の淡い尖りを含めば、小さく体をびくつかせる。
黙っているのを不思議に思っていると、気づく。
そう言えば戯れにマナーモードを命じていた。
慌てて解除すると、イワンはしがみついて甘えてきた。
小さく喉を鳴らして擦り寄るのはまるで動物だ。
身体をゆったりと撫でながら抱き、尻を柔くもみしだく。
ぴくっと引き攣る柔肉を両手で割り開くように揉み、手で感触を楽しんだ。
飽きる事はないが適当なところで切り上げ、脚を上げさせる。
柔らかな内腿を頬で楽しみ、大きく開かせた。
「だ、だめ・・・・・・」
「かまわんだろう」
甘く立ってぴくぴくしているものは、ピンクでかわいい。
オプションで色々選べたのだが、標準でカラーを薄めにしてみた。
子供の様な色、大人のモノ。
可愛いなと思いつつ指でつついてやる。
「ひんっ」
ぽたっと蜜が落ちた。
感度が良い。
嬉しくなってつついていると、イワンのそこは益々嬉しそうに蜜まみれになっていく。
含もうとすると泣かれたので、今日だけだからな、と釘を刺して許してやった。
後孔を探る。
小さく窄まった孔は、少し硬めだ。
だが、何度も押して撫でていると、少し緩んでくる。
そこで、指を舐め濡らして差し入れればあっさり飲み込んだ。
騙されやすい身体だ。
セキュリティは高いのにな、と笑えば、イワンが恥ずかしがって顔を隠してしまう。
中を弄りながら耳元で通話を繰り返す。
誰ともつながっていない、イワンへの愛のメッセージ。
繰り返される言葉に、身体も段々花開き香る。
柔らかく開き始めた肉の蜜壷に唾を飲めば、従順な携帯は頬を真っ赤にしながら脚を開いた。
褒美に口づけ、ゆっくりと身を沈める。
「んっ・・・・・・・」
「痛むか・・・・・」
「だ、じょう、ぶ・・・・・」
手を伸ばすから握ると、首を振られた。
ぎゅってして、と掠れた声で言うから、嬉しさと愛おしさに任せて抱きしめた。
反動でますます深くなる結合。
だが、満たされた思いに震える身体は苦痛を堪える事が出来た。
ゆっくりとした交わりを何度も繰り返し、疲れ果てた携帯が眠りに落ちるまで。
甘い情交は、終わりを見なかった。
目を覚ましたイワンはレッドからメールを受け取った。
保存メールらしい。
大事に保管することを約束して、宛先と題名を記録。
封筒に入ったメール。
宛先は『イワン』。
題名は『愛している』。
中に何が入っているのか見たかったけれど。
送信がかかるまでは。
おあずけ。
***後書***
レッドは純愛担当、携帯電話にも純愛かませる貴重な人材。