【 日用品シリーズ-019 】
幻惑のセルバンテスは、自他共に認める料理下手である。
盟友の奥方とともに料理の神に見放された希少な人間。
彼女との話は大抵『この前作ったアレが何故失敗したのか分からない』と言うもの。
そう料理もしないアルベルトでさえ、隣で聞いているだけで背中が痒くなる。
そんな薄ら寒い料理しか出来ない男は、先ず根本的にセンスと言うものが無く、意味が分からないものを適当に進めてしまう。
材料に関してケチるとかいうのでないから余計に性質が悪いのだ。
昨日作ったのはマカロンだったが、菓子の基本である計量さえしないし、卵白を泡立てるのも不十分。
勿論粉をふるって空気を含ませダマを・・・・なんて事はしない。
よって、出来あがった可哀想なカリカリ。
おまけに色素はピンクと書いているのに、思い切り緑。
店のような濃い濃度ではないから、最早蛍光緑色だ。
恐ろしいものを妻と二人でカリカリして、出来はまずまずと頷きあうのが理解できない。
妻の物と同レベルだから、別段とめないが。
しかし、そろそろこの男の記念日。
何のか知らないが、この男は自分の記念日をたくさん作っている。
初恋が散った記念日とか、大作君とお昼寝した記念日とか。
本当にどうでもいいのだが、元々蔑ろにしたって騒がない男。
気まぐれで、小技大国日本から取り寄せたのは『ダマにならないお菓子用小麦粉』。
プレゼント包装指定で配送しておく。
あの男がまともなものを作れるかは不明だが、何となく自分の気は済んだ。
「わー・・・・・珍しい」
添えられたカードには、記念日の贈り物と言うような事が書いてある。
別に何かを強請りたくて設定しているわけじゃないが、嬉しいものだ。
さっそく開封すると、人一人入りそうな箱の中身は小麦粉。
お菓子用だから恐らく薄力粉であるのだが、セルバンテスにはそんな話は通用しない。
「パン作ろうかな」
パン・・・・麺麭・・・・ぱん・・・・・それは基本的に中力粉、ないし配合を変えて強力粉などである。
殆どの場合、薄力粉のみで作る事はない。
しかし、この男がそんな事を知る筈がない。
「お菓子用だからねぇ・・・・メロンパンか・・・・・クリームパンかな」
るんるんで予定を立て、いつでも綺麗に新品の材料の揃う料理専用冷蔵庫を開ける。
生クリームを持って、ちょっと考えた。
「でも、昼時だし・・・・・カレーパンか明太子パンでも良いなぁ」
とは言え、個人的には卵ソーセージパンが好きなんだよね。
独り言を呟き、取り出したのはフランクフルト。
そして、卵。
他に基本的な材料を揃え、カフェエプロンをして。
「さて、始めようか」
粉を出して驚いた。
随分珍しい。
真っ白で、滑らかで、突然明るい場所に出されてきょろきょろしている。
パンを作って良いかな、と聞くと、嬉しそうに頷いてくれた。
そして、真剣ないい加減調理開始。
小麦粉に水をかけ、バターをぐちゃぐちゃ塗りたくる。
ドライイーストを振りかけ、塩を振って。
よく、捏ねる。
柔らかいが平らな胸をもぎゅもぎゅと揉むが、痛いと泣いている。
余りに可哀想な泣き方なものだから、キスをして慰めた。
泣きやむ頃にはバターが馴染んで、身体中とろりと光っている。
生地の時点で美味しそうだと生唾を飲み、出させた尻をもきゅもきゅ。
硬く緊張していた尻が段々と解れ、ぷりむちっとしてくる。
嬉しくなってぎゅいぎゅい揉んでいると、甘い匂い。
作業台に僅かに光るのは、加えていない透明な蜜だ。
発酵が進んでいると感心しつつ、もっとモミモミ。
小麦粉が喘ぎながら少し休ませて欲しい、寝かせて欲しいと訴える。
ちょっと残念だが、待ってあげる。
その間に、少し話をした。
彼・・・・イワンはとある畑で初めてとれたタイプの小麦粉で、後にも先にも彼のような小麦粉は無いのだという。
一人ぼっちで不安だったし、余りに高く・・・・小麦粉に出すような金額で無い額だったため、誰も買ってくれない。
それを買われて、今すごく不安だが、頑張りたいのだと。
何とも直向きで頑張り屋さんタイプだ。
好感が持てたセルバンテスは、彼にお茶を勧めた。
彼はとても遠慮していたが、言い募ると礼儀正しくお礼を言って飲んでくれた。
美味しいです、と笑ってくれる笑顔にくらくらする。
小麦粉って、こんなに可愛かったかな。
そっと触れると、発酵が進んだのか温かく柔らかい身体。
そっと作業台に寝かせ、話しながらゆがいていた卵の殻を剥く。
マヨネーズは多めの方が美味しいから、たっぷりかけた。
そして、柔らかくなっているピンクの孔に押し付ける。
「力抜ける?」
「はい・・・・・ぁ、ぁ、ん・・・・っ」
にゅる、と入り込んだ卵。
小玉でも大玉でも黄身の大きさは然程変わらないから、黄身が好きなセルバンテスは小玉を選ぶ事が多い。
これも正真正銘S玉だったが、それにしても入りが悪い。
まだ6個目なのに、もう半泣きで許しを請うている。
個人的には10個くらい使いたかったが、この可愛い小麦粉が可哀想になって7個でやめる。
そして、フランクフルトを。
・・・・入れる前に、卵を崩さなければ。
かと言ってフォークなんて入れたら可哀想だし、じゃあどうしようか。
どうしようかと言いつつ、心は既に決まっている。
この可愛い小麦粉に厭らしい事がしたい。
もっと泣かせたい、そしてイかせたい。
卵を崩すからと言い訳して、指を差し入れる。
ぐいぐい突いてやると、卵は益々奥に入り込んだ。
かた茹で卵がそう簡単に指で崩せるわけがない。
イワンは身を捩っていたが段々と抵抗しなくなり、弱弱しくセルバンテスの指を引っ掻く程度になっていた。
口からは溜息じみた小さな声が漏れているが、身体は切なそうに震えている。
「あ、あ、苦しい、たまご、おなか・・・・・」
「イワン君・・・・・凄く可愛い・・・・・」
白かった内腿は仄かな桜色に染まり、ふるふると震えている。
薄く乗った皮下脂肪が柔らかに震えるのは何とも愛らしく、厭らしい。
この小麦粉は男性型だが、胸肉もたっぷりしていた。
腿肉も女性とまではいかないが、とても柔らかい脂肪が薄くついている。
男性にしては柔らかい身体、しかしウエイトが重いかというとそうでもなさそうだ。
脚を掴んで上げさせても、そう重くはない。
くるぶしにそっと歯を立てると、脚を引こうとする。
「あ、あ・・・・・・」
「痛いかい?」
「く、すぐ、ったい・・・・・」
余りに可愛い返事に、思わず息を詰める。
完全に勃起しているのはお互いだが、彼より少なくとも5歳は年上だろう自分が10代のように元気なのを見せるのはちょっと気が引けた。
彼の前で、余裕の大人のふりをしていたかった。
優しく笑って、何度も指で突き上げる。
お腹から時折ぐぎゅっと音がして、ぽたぽたと蜜が落ちていく。
細いところを通った卵に激しく感じながら、初めてで頭がついていかない。
気持ち良いと、認識できずに戸惑う。
その愛らしい精神構造が嬉しくて、卵を奥に詰め込んで引き抜いた。
そして、フランクフルト。
自前のでも良かったが、ここは腸詰。
そろそろと押し込んでいくと、ぬぬ、と入り込んでいく。
執拗に嬲られた所為で柔らかくなっているそこは、すっかり騙されていた。
宥めるように腹を撫でられ、何も知らない小麦粉はフランクフルトを受け入れていく。
全て差し入れてしまい、次は焼き。
でも、もう良い。
焼いたら食べなければならないから。
この小麦粉とずっと一緒に居たいから。
今なら、洗えば何とかなるから。
うつ伏せにさせ、そっと尻を割り開く。
ピンクの窄みが僅かに開き、赤茶の腸詰を垣間見せていた。
舌で舐めると、ひくひくする。
息を吹きかけると、窄まろうとする。
堪らずむしゃぶりついて、強く吸引した。
イワンが悲鳴を上げる。
「ああっ、だ、だめ、まだ、焼いてな・・・・っぁん!」
「は・・・・・これ、加熱済みタイプだから・・・・・君に関しては、粉くらい生でも大丈夫だよ・・・・」
興奮を滲ませた男の声に、イワンは頬を染めた。
こんな格好良い男性に買われるとは思わなかったが、その上こんな調理をされては抵抗できない。
強く吸われてお尻の孔が痺れ始めると、同時に緩んだ締まりでフランクフルトが顔を出す。
ゆっくりと吸いだされ、食べられているのが分かる。
咀嚼の音が恥ずかしい、居た堪れない。
我慢して震えていると、突然の喪失感。
全て吸いだされて、食べられてしまった。
でも、同時に襲ってくる強い感覚。
下がってくる卵。
我慢できない、出したいという欲求。
必死に後孔を締めていると、笑う気配がした。
「いいんだよ・・・・全部食べさせておくれ」
「だ、だめっ」
「おや、そんな事を言うと・・・・・」
「ああんっ」
ぢゅうぢゅうと執拗に吸われ、卵がせり出していくのが分かる。
必死に締めるが、駄目だった。
直径を過ぎれば身体は異物を排除する方向に力を込め、外からは容赦ない吸引。
いとも簡単に吸いだされ、食べられてしまう。
「うん、美味しい」
「あ・・・・何で・・・・・そんな・・・・・」
悲しそうなイワンに、セルバンテスが微笑む。
「君が、好きだから」
「すき・・・・・?」
「そう、君が好き」
だから、私に縛りつけるんだ。
快楽でもいい、脅迫したっていい、私と一緒に居てくれるなら。
どこか薄ら寒い要求だが、優しい笑顔のまま。
そしてその瞳が、余りに寂しい色だった。
手を伸ばし、引き寄せる。
お腹に力が入って卵が一個出てしまい、痛みが走った。
でも、今はそんなことより。
このひとが、この優しい人が。
涙を流さずに泣いているのをなんとかしたくて。
貴方に縛ってください、私を貴方のものにしてください。
気づいたらそう、言っていた。
男は驚いた様に目を瞬かせ、そして。
酷く嬉しそうに、笑ってくれた。
盟友が初めてまともな料理を寄越した。
メロンパン。
味はどうやらホットケーキミックスだが、こんな小技を思いついてまともに作れたのは絶対に一人でやったのではない。
大方女をつれ込んだか・・・・否、あれはそういったタイプの女より開放的に遊べるタイプが好きだ。
では料理人を雇ったか・・・・否、それに作らせたにしては味が貧相だ、形状も。
一緒に同封されていた出来の良いビスコッティも材料は同じらしいが、手順が良いのだろう。
かりっとしつつ、香ばしく、そして甘さ控えめ。
一体どういう事なのか不思議に思っていると、ビスコッティをこりこりしている妻が強請る。
もう夫婦というより親友と言った感じの関係だが、悪い関係でない妻。
喧嘩もするが、気も合う。
顔を見合わせ、向こうは満面の笑み、こちらは苦笑。
「・・・・・行くか」
「ええ、きっと出来たお嫁さんよ」
「惚気が辛いが」
「そう?」
コートを取って妻に着せ、妻が自分に着せ。
一緒に、部屋を出た。
***後書***
腸の中に腸詰(黙れ)